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PFI・PPPとは?民営化との違いや仕組みをわかりやすく解説

厳しい財政状況や人口減少、公共施設の老朽化などに対峙しながら、活気あふれる地域経済を実現していくことは、多くの地方公共団体にとって共通の課題です。そんな中、官民のパートナーシップ「PPP」、そしてその代表的な手法である「PFI」が注目されています。

 

しかし、この「PPP」や「PFI」、言葉を耳にしたことがあっても、具体的にどのようなものか分からないという方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、PPP・PFIの仕組みや期待される効果について詳しく紹介します。

PPPとは

PPP(Public Private Partnership)は、公共サービスの提供に民間が参画する手法を広くとらえた概念で、公共団体と民間が連携し、効率的かつ効果的な公共サービスを実現するものです。

 

近年、日本では全国的な人口減少や社会保障費の増加等により、公共サービスの財政状況は厳しくなっています。

 

一方で、1970・1990年代に整備された多くの社会資本は老朽化し、公共団体は維持補修や更新に追われています。さらに、人口減少による公共施設への需要の減少や社会環境の変化に応じ、公共施設の集約化、広域管理や機能見直しが求められる中で、従来の手法では公共サービスの提供・維持が難しくなると予想されます。

 

このような状況を打開するためにPPPの推進を図り、公共施設の整備、維持管理、運営などにおいて行政と民間が連携し、民間の資本やノウハウを活かすことで、資金の効率的使用や行政の効率化、ひいては地域の行政課題を解決する方法が模索されています。

PFIとは

PPPはPFIを包含し、PFIにもサービス購入型PFI事業、収益型PFI事業のほか、コンセッション方式での事業などがあります。

ここでは、PPPの代表的な手法であるPFIについて詳しく解説します。

PFIとは

PFIとは、公共事業を実施するための手法の一つで、正式名称を、Private Finance Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といいます。

 

民間の資金や経営能力、技術などを活用し、公共施設等の設計や建設、維持管理、改修、更新などを、行政が直接実施するよりも効率的・効果的に行う戦略的手法です。あくまで公共団体が発注者という立場であり、公共事業として事業を行うため、民営化とは異なります。

 

PFI自体は1990年代前半にイギリスで生まれた手法であり、日本では1999年7月にPFI法(「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」)が制定されて、法律に準拠したPFI事業が行えるようになりました。

PFIの導入目的

公共団体がPFIを導入する目的は、行政支出の大きな割合を占めるインフラ整備等の行政サービスにおいて民間の資金やノウハウを導入し、コストを抑えて財政の健全化を図ることです。

 

また、これまで行政が行ってきた現場での業務を民間事業者にゆだねることで、行政が自ら担う必要性の高い分野に集中することができることとなり、公共部門全体における効率性の向上が期待されます。

 

一方、PFI事業を民間が実施する目的やメリットは、これまで公共団体が行ってきた業務に参画することにより新たな事業機会が創出されることです。

PFIの仕組み

従来の公共施設等の整備などでは、公共団体が設計・建設・運営等の段階ごとに発注をしていましたが、PFI事業ではそれらを一体的に、さらには資金調達までを含めて、最も効率的・効果的に行う民間事業者を競争提案により選定します。

 

PFIの特徴の一つがこの資金調達です。従来の公共事業では多額の整備費用を公的資金で対応していましたが、民間事業者が自ら資金を調達し、公共団体はサービスの対価として契約期間中に資金を支払います。これにより公共団体は一度に多額の資金を支出する必要がなくなり、財政負担が平準化されることも公共団体にとってのメリットです。

 

PFI事業における公共団体の役割は、提供されるサービスの内容や水準を決定し、サービス内容の水準を保つための監視役となることが一般的です。

 

民間事業者側は、施設の設計や建設、運営までを含むため、応募時にはコンソーシアム(企業連合)を組むケースが多くなっています。

 

また、PFI事業は公共事業であり、サービスの安定や継続的な提供を行う必要があるため、コンソーシアムに参加する企業の経営状況が事業に影響を与えないように、それぞれが出資を行ってSPC(Special Purpose Company・特別目的会社)を設立するのが一般的です。

 

経営力のないSPCだと破綻する可能性もありますが、その場合に備えて公共団体と金融機関はあらかじめ「直接協定」を結び、SPCが破綻しないように監視し、破綻した場合でも最後まで事業が遂行される仕組みを作っています。

PFIの事業分野

PFI事業の対象は、国または地方公共団体が事業主体となる事業で、教育・文化、健康・環境等の様々な分野に渡ります。PFI法第2条では、下記の分野が対象として定められています。

対象施設

具体例

公共施設

道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道

公用施設

庁舎、宿舎

公益的施設及び賃貸住宅

教育文化施設、スポーツ施設(スタジアム、アリーナ等)、集会施設(研修施設、会議施設、展示場施設等)、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街

その他の施設

情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設、観光施設及び研究施設

参考サイト:民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律

これらの事業分野において民間事業者が担うことが適切なものはできる限りゆだねるというPFIの基本理念や期待される成果を実現するため、以下の5原則・3主義を満たしていることがPFI事業の条件です。

  • 公共性原則:公共性のある事業
  • 民間経営資源活用原則:民間の事業や経営能力、技術を活用
  • 効率性原則:民間事業者の自主性と創意工夫を尊重
  • 公平性原則:特定事業の選定、民間事業の選定で公平性を担保
  • 透明性原則:事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性を確保

また、事業の実施においては以下が条件となります。

 

  • 客観性がある各段階での評価
  • 公共団体と民間が取り交わした内容を明文化した契約の締結
  • PFI事業者の法人格の独立性や事業部門の区分経理上の独立性の確保

 

PFIの事業方式

PFIの事業方式にはいくつか種類があります。

 

どのような事業方式が採用されるかは、PFI導入可能性調査の中で検討され、法律や制度上の制約、事業の特性などから総合的に判断されます。

 

PFIの事業方式を以下に紹介します。

BTO(Build Transfer Operate)方式

公共団体が民間事業者に対し、施設などを設計・施工・維持管理・運営を一括して発注する方式です。施設完成後は所有権を公共に移転し、運営を同一の民間事業者に委ねます。

BOT(Build Operate Transfer)方式

民間事業者が施設を設計・施工・維持管理・運営を行い、契約期間修了後は施設管理者に所有権を移転する方式です。民間事業者は建設や運営費用を負担し、運営による利益を得ます。

BOO方式(Build Own Operate)

民間事業者が施設を設計・施工・維持管理・運営を行い、契約期間終了後も民間事業者が施設を所有し続けるか、施設を解体・撤去して事業を終了する方式です。

 

施設は公共団体に売却されることもあります。

RO(Rehabilitate Operate)方式

民間事業者が施設を改修した後に、その施設を管理・運営する方式です。所有権は公共団体のままで移転はしません。

PFIの事業類型

PFIの事業類型は、サービス購入型・独立採算型・混合型などがあります。

 

PFIの実施においては、事業内容や法制度、採算性を踏まえながら、最も効率的かつ効果的な公共サービスを提供できる事業の枠組みを構築しなければなりません。

 

PFIの事業類型を以下に紹介します。

サービス購入型

サービス購入型とは、公共団体がPFI事業者による公共サービスの対価としてサービス購入費を支払い、PFI事業者の収益となる事業類型です。

 

このタイプは事業収益が見込めない、もしくはわずかしか見込めない事業に用いられ、例として公営住宅や庁舎、公営住宅などが挙げられます。

収益型

収益型とは、公共サービスの提供で利用者から支払われる利用料金が、PFI事業者の収益となる事業類型です。

 

このタイプは事業収益で総事業費を十分にカバーできる事業に用いられ、例として有料駐車場やコンテナターミナルなどが挙げられます。

混合型

混合型とは、公共団体から支払われるサービス購入費と、公共サービスの提供によってその利用者から支払われる利用料金の双方がPFI事業の収益となる事業類型です。

 

このタイプは事業収益があるものの、公共の助成も必要な場合に用いられ、例として宿泊施設や温泉施設などが挙げられます。

「公共施設等運営権」コンセッション方式

コンセッション方式は、平成23年PFI法改正によって導入され、「公共施設等運営権」として規定された官民連携事業の方式です。

 

利用料金の徴収を行う公共施設において、施設の所有権を公共主体が有した状態で、施設の運営権を民間事業者に選定します。

 

なお、令和4年のPFI法改正により、コンセッション事業に関する実施方針の変更手続きの創設が行われました。

 

これによって事業期間中の事業変更などを踏まえた施設の改修工事が柔軟にできるように、実施方針で定めた公共施設等運営に係る施設の規模や配置の変更が可能となりました。

PFIで期待される効果

PFI事業を行うことで、以下のような効果が期待できます。

コスト低減と質の良い公共サービスの両立

PFI事業では、民間事業者の経営上のノウハウや技術的能力を活用することで、財政の効率的な仕様や行政の効率化と質の良い公共サービスの両立が期待できます。

 

なぜなら、PFI事業では設計・建築・維持管理・運営などの業務を一括で発注し、性能を満たしていれば細かな手法を問わない「性能発注方式」が採用されているためです。

 

厳格な規定と仕様に基づいて行う必要がある仕様発注の公共事業に比べて、自由度が高い性能発注方式の方がコストを削減しながら柔軟性を持ったサービスを提供できます。

 

また、PFI事業のための資金調達の方法としてプロジェクトファイナンスの手法を取り入れることにより、新しいファイナンス・マーケットの創設も期待できます。

 

一方、民間に幅広い業務を任せることで、行政がこれまで以上に業務状況を把握して管理や指導をしなければ、公共サービスの品質低下を招く可能性もあります。

民間企業のイメージ向上や事業機会の創出に貢献

PFI事業によって民間企業の参入や事業の活性化が促進されることで、雇用創出や事業機会の創出につながり、経済的な効果が期待できます。

 

PFI事業は、国や公共団体等が行ってきた事業を民間事業者にゆだねるため、民間にとっては新しい事業機会が増えます。

 

また、他の収益事業と組み合わせることも新たな事業機会を作ることにつながるでしょう。

 

民間事業者にとってもメリットが大きく、公共性の高い社会事業に参画することや、公共団体との連携による企業イメージの向上が期待できます。

公共団体のリスク分散・コスト削減

PFI事業により、公共団体のリスク分散やコスト削減を図ることができます。

 

事業を進めていくうえで事故や需要の変動、天災、金利の変動による経済状況の変化など、予測できない事態によって損失が発生するおそれがあります。

 

PFI事業では、予め想定されるリスクを抽出して、個別のリスク毎に、公共団体と民間事業者の間の分担を取り決めます。さらには民間事業者が複数の企業体から構成されることにより、それぞれの知見を活用してこれらのリスクを把握・評価・顕在化の防止及び顕在化した際の措置に当たることで、効率的なリスク管理が可能です。

 

上記のリスク管理に関わるコストに加え、前述のとおり公共サービスの全部もしくは一部を民間事業者が一体的に扱うことで、総事業費の削減も期待できます。

実際の運営を見据えたうえで設計提案ができる

PFIの事業範囲は事業方式により異なりますが、設計から運営までを一体的に行うため、民間企業のノウハウや経験を活かし、実際の運営を見据えたうえで設計の提案ができることです。

 

例えば、公共文化ホールの建替えに際し、カフェやワークスペース等の日常的に利用しやすい機能を併設することで、イベント日以外の集客につながります。

 

ホールの入口までの導線上に市民が憩う展示スペースを設けることで、コンサートと連動した全館での催事等のより多くの賑わいをつくることも考えられます。こういった発想は運営を見据えた事業者ならではといえるでしょう。

 

このような施設ができてからでは実現できない集客方法も、設計の段階から民間企業のノウハウを活かせることはPFIのメリットの一つです。

事業期間が長いためノウハウが蓄積できる

他にも、PFIのメリットは契約が長期間となるため、運営時にノウハウが蓄積できることです。

 

PFIを用いる場合は維持管理期間が長期にわたることから、事業や修繕実績の積み上げによるノウハウ蓄積ができます。また、長期的視点に立ったサービス向上も期待できます。

 

運営が長期に及ぶことは社会的経済状況の変化や制度の改正などを受けやすいデメリットもありますが、それ以上に情報資産にもなるノウハウが蓄積できるメリットは大きいといえるでしょう。

PFIの事例

PFIはその事業期間の長さ、事業範囲の広さから、公共団体、複数の事業者、金融機関、地域住民等、さまざまな人々が関わる複雑な事業です。そのため、それぞれの立場や目的を理解し、適切なコミュニケーションを設計することが重要になります。

 

JTBコミュニケーションデザインでは、全国60以上のPPP/PFI事業を含む公共施設・事務局等の運営・プロデュースで培ってきた専門的なノウハウ ・ リソースと、DXを組み合わせたソリューション力を合わせ、持続的な地域全体の魅力向上や活性化に貢献しています。運営開始後の賑わい創出、事業管理、地域とのコミュニケーション、コミュニケーション設計を得意としています。

 

例えば、自社では埼玉県さいたま市にある文化施設のプラザノースのPFI事業に2008年から参画し、現在まで施設の運営・プロデュースを行っています。

 

近代漫画家の北沢楽天のゆかりの地であることから、アートやユーモアに特化した事業を展開し、毎年5月には約1週間にわたる「ノースで遊ぼうあーとひろばの日」を設け、文化芸術に関する体験型や鑑賞型のイベントを行い、地域とのコミュニケーションや賑わい創出に貢献しています。

 

また、地元Jリーグチームとの連携でエリア価値の向上を高め、応援ビッグ制作のワークショップと試合観戦を共同周年事業として企画し、スポーツと文化施設の関係を図り、新しいファンの獲得や認知度上昇などの効果をもたらすことに成功しました。

まとめ

この記事では、PPP・PFIの概要や民営化との違い、期待される効果などを紹介しました。

 

PPPとは公共事業を公共団体と民間が連携して行うこと、PFIとはPPPの枠組みの一つで民間の資金や経営能力、技術などを活用し、効率的かつ効果的に公共事業を進めることです。

 

PFIは効率的で質の高い公共サービスの提供や経済の活性化、公共団体のリスク分散・コスト削減などが期待できます。

 

そして、民間事業者にとっても事業領域の拡大や主体的な地域貢献への参加によるイメージ向上などのメリットがあります。

 

JTBコミュニケーションデザインは、PPP・PFIの手法で公共文化施設やスポーツ施設、観光集客施設などの多数の施設をプロデュース・運営管理しています。

 

公共団体をはじめ、PFI事業に関わるさまざまな事業者様のニーズを把握し、プランをご提案いたします。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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