コンセッション方式とは?メリットや注意点、文化施設へのコンセッション導入について解説
2011年のPFI法改正で導入された制度の一つに、コンセッション方式があります。
コンセッション方式は、公的主体が所有する公共施設について、民間事業者による安定的で自由性の高い運営を可能にします。
道路や水道などのインフラ事業をはじめ、文化施設におけるサービス刷新や活性化などの運営改善、地域活性化においても注目されています。
この記事では、コンセッション方式の一般的なメリットや注意点をはじめ、文化施設でコンセッション方式が注目されている理由や導入方法を紹介します。
コンセッション方式とは
コンセッション方式は多くの自治体が導入している事業形態です。ここでは、コンセッション方式の基本概要や、その他の制度との違いを解説します。
コンセッション方式とは
コンセッション方式とは、利用料金の徴収を行う公共施設において、施設の所有権を公共主体が所有したまま運営権を民間事業者に設定する方式です。
公的主体が所有する公共施設について、民間事業者による自由性の高い運営を可能にすることで、利用者ニーズを反映したサービスの提供を目的に導入されました。
対象となる公共施設は国や地方自治体が所有権を有し、かつ利用料金を徴収するものを対象としています。
コンセッション方式では、契約した民間事業者は公共施設の利用料金など、自らの資金で施設の運営・維持管理を行う独立採算が原則となります。
民間事業者は運営権に対して担保が設定されるため、運営権をもとに資金調達も可能です。一方、自治体は民間事業者から運営対価を得ることができます。
スモールコンセッションとは
スモールコンセッションとは、PPP/PFI推進アクションプランにおいて、自治体が所有する空き家など使用していない施設を活用した小規模なコンセッション事業を指します。
例えば、市が所有する老朽化した施設をスポーツ施設にリノベーションしたり、空き家など使用していない施設を宿泊施設として活用したりなどです。
事業規模は10億円未満程度であり、手続きが簡単かつ短期間で行えるという特徴があります。
国はPFIの新たな分野としてスモールコンセッションを推進していますが、PFIの実績やノウハウが少ない自治体は、導入ハードルが高いという課題もあります。
PFIとの違い
コンセッション方式はPFI手法の一つです。
PFIは民間の資金、経営能力、技術力を活用して公共施設の設計や建設、改修、更新、維持管理及び運営を行う手法です。
民間の資金、経営能力、技術的能力を活用し、国や自治体が直接実施する場合に比べて、効果的、効率的に公共サービスを提供できます。
なお、従来の独立採算型のPFI事業は、事業対象の土地や建物の所有権に担保が設定されますが、コンセッション方式では運営権に担保が設定されるという違いがあります。
指定管理者制度との違い
指定管理者制度に比べて、コンセッション方式は事業期間が長く、施設機能の向上を目的とした投資ができるなどの違いがあります。
指定管理者制度は地方自治法の改正によって導入された制度で、公の施設の運営維持管理に係る包括的な管理に関する権限が譲渡されます。
そのため、PFI法に基づくコンセッション方式とは、根拠の法令そのものが異なっています。
また、指定管理者制度は対象が地方自治法に基づく公の施設となるため、国のインフラ施設や地方自治体の収益施設、庁舎などに使うことはできません。
民営化との違い
民営化は公益性が民間事業者に委ねられるのに対して、コンセッション方式は民間事業者との契約によって料金に関する公益性が確保されるという違いがあります。
民営化は特定の民間事業者に事業主体を移転するものであり、特定の事業者が半永久的に事業を行います。
一方、コンセッション方式は期間を定めて契約に基づき実施されるという点が違います。
また、民営化は民間事業者に資産を譲渡するのに対し、コンセッション方式では資産を自治体が保有するという違いもあります。
自治体におけるコンセッション方式のメリット
コンセッション方式は、自治体へのメリットが多い仕組みです。ここでは、自治体におけるコンセッション方式のメリットを解説します。
運営対価を確保できる
コンセッション方式では、公共施設の運営によって発生した利用料金は民間事業者の収入となりますが、自治体は民間事業者から運営対価を得られる可能性があります。
また、自治体は運営対価を徴収することで、施設投資額の早期回収を実現できる可能性がある点もメリットです。
運営対価は事業期間内に事業から見込まれる総収益や、運営費用を控除した金額などに基づいて計算されます。
住民へのサービス向上が期待できる
コンセッション方式を導入するメリットは、民間事業者のノウハウを取り入れることで、住民へのサービス向上が期待できる点です。
例えば、文化施設をコンセッション方式で民間事業者に委託した場合、民間事業者は利益を出すために、多数の来館者を呼ぶための企画を計画したり、稼働率上昇のために営業活動したりします。
これまでにない魅力的な企画を実施し、地域の中で芸術文化に触れる機会が増えると、住民の満足度も高まります。
そして、住民の満足度の高まりはシビックプライドの醸成につながり、長期的にみると地域社会の活性化や魅力の向上にもつながるでしょう。
財政負担を軽減できる
コンセッション方式を導入することで、事業損益を民間事業者に移転できるため、財政負担を軽減できるメリットがあります。
また、コンセッション方式では費用が収入を上回るような収益性が低い施設でも、自治体が民間事業者に別途対価を支払うことでコンセッション事業が成立します。
このような方法を混合型といいますが、民間事業者の創意工夫を活かすことで収入が増え、税収の増加によって財政負担が軽減される効果が期待できます。
地方における事業機会の創出につながる
コンセッション方式を導入し、民間事業者が付帯事業を始めることにより、地方における事業機会の創出につながるメリットがあります。
コンセッション方式では、民間事業者が収益性を高めるために付帯事業を行うことが可能です。例えば、施設内に売店やレストランを設置して収益を得ることもできます。
また、収入を増やすために施設や設備の機能向上を図ったり、最新技術の導入をしたりなどの戦略的な投資も可能です。
このような付帯事業は事業機会の創出につながり、地域経済の活性化にもつながります。
リスクを分担できる
コンセッション方式の導入により、自治体と民間事業者でリスクを分担できる点も大きなメリットです。
コンセッション方式では、リスクをもっともよく管理できる者が当該リスクを分担するという考えが基本となっています。
そのため、需要リスクなどの運営リスクは民間事業者が、不可抗力に伴うリスクは自治体が負うのが一般的です。
自治体におけるコンセッション方式の注意点
自治体がコンセッション方式を導入する際は、どのような注意点があるのでしょうか。ここでは、自治体におけるコンセッション方式の注意点を紹介します。
民間事業者の選定を慎重に行う必要がある
コンセッション方式の対象となる公共施設の中には収益性が低いものも多いため、民間事業者が収益を上げるためには運営ノウハウが必要です。
コンセッション方式を導入し、民間事業者が撤退した場合、その公共施設の運営責任は自治体が負わなければなりません。
そのため、コンセッション方式の導入においては、民間事業者の運営管理実績やノウハウを活かせるかどうかが重要です。
コンセッション方式を検討する際には、民間事業者の選定を慎重に行う必要があります。
文化施設でも注目されるコンセッション方式
コンセッション方式は文化施設でも注目されています。ここでは、文化施設におけるコンセッション方式について解説します。
文化施設でコンセッション方式の事業が注目される背景
文化施設でコンセッション方式の事業が注目されるのは、自治体が利用料金のみで文化施設の維持管理や運営をするのが難しい状況にあるためです。
文化施設は劇場、音楽堂、文化会館、市民会館、文化センターなどが挙げられます。
これらは昭和50~60年頃に設置された施設が多く、急速な老朽化が予想されるため、今後は維持管理費用や更新費用の増大が見込まれます。
さらに現在、少子高齢化や人口減少による税収の低下の問題を抱えている自治体は少なくないため、文化施設の利用料金だけでこれらの出費をすべてまかなうのは困難です。
そのため、付帯事業による収益増加や、周辺施設への経済波及効果が期待できるコンセッション方式の推進が行われています。
また、博物館や美術館などは観光業との親和性も高く、魅力ある企画内容や営業活動を行うことで、施設全体の振興や来館者数の増加が期待できます。
周辺地域に経済波及効果をもたらすだけでなく、地域活性化の核となる可能性もあります。
文化施設におけるコンセッション方式活用で受けられる補助
文化庁は、文化施設におけるサービス刷新や活性化等運営改善に関し、コンセッション方式を活用した運営充実に必要な経費に対する支援を実施しています。
経済財政運営と改革の基本方針2023において、文化芸術と経済の好循環による活動基盤強化と持続的発展を加速し、心豊かで多様性と活力のある文化芸術立国を実現するとあります。
文化庁が行うコンセッションを活用した支援策は、令和5年度から令和13年度までと想定されています。
令和6年度の支援予算は、専門家による助言等の伴走支援として3,000万円、導入調査・検討の取り組みへの支援として4,100万円です。
このような補助を活用することで、効率よく文化施設を対象としたコンセッション方式の導入を図ることができます。
コンセッション方式を導入するためには
コンセッション方式は基本構想や基本計画の立案から始まり、議会の承認を経て、民間事業者による事業開始という流れで進みます。
コンセッション事業は、ヒト・モノ・カネの観点からさまざまな強みがある事業です。
そのため、「人が集まる施設にしたい」「財政負担を軽減したい」など、自治体が解決したい課題があれば導入を進める価値は高いといえるでしょう。
以下は、コンセッション方式の開始から終了までの流れです。
1. 基本構想、基本計画
2. 民間投資意向調査、資産評価、導入可能性調査
3. 実施方針条例の制定
4. 実施方針の策定
5. 特定事業の選定
6. 民間事業者の選定
7. 運営権決定の議会の議決
8. 運営権設定、公表
9. 実施契約締結、公表
10. 運営権の登録と利用料金の届け出
11. 運営準備(業務引き継ぎ)
12. 事業開始
13. モニタリング
導入までにかかる期間は、事業の特性によって大きく異なる点に注意が必要です。
まとめ
この記事では、コンセッション方式の概要をはじめ、メリットや注意点、文化施設へのコンセッション導入が推進されている理由などを解説しました。
コンセッション方式は利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を自治体が有したまま、運営権を民間事業者に設定できる方式です。
民間のノウハウを生かした施設運営ができるため、収入の増加や新しい事業の創出、財政負担の軽減、地域活性化が期待できます。
一方、コンセッション方式による恩恵を受けるためには、民間事業者側の施設管理の経験やノウハウの多さが重要です。
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