文化施設とは?種類・トレンド・社会教育施設との違いを紹介
文化施設には、文化芸術の発展や振興をはじめ、地域への愛着の深まり、周辺ビジネスへの波及など、さまざまな役割や効果があります。
また、2003年の法改正後は公立文化施設の民間事業者の運営が可能となり、サービスや形態も多様化しています。
地域活性化でも注目されている文化施設ですが、運営においては快適な環境を提供するためにさまざまなノウハウが必要です。
社会や地域のニーズに応えることで、高い信頼感や評価を得ることにもつながります。
この記事では、文化施設の運営にあたって知っておきたい役割やトレンド、社会教育施設との違いを紹介します。
文化施設とは
日本には多くの文化施設があります。ここでは、文化施設の概要や社会教育施設との違いなどを解説します。
文化施設の概要
文化施設とは、音楽や演劇、美術展示などが行われるホールや劇場、それらを含む複合施設を指します。
また、映画館やマンガ、アニメなどの芸術文化を含む施設も文化施設に含まれ、運営しているのは国や地方公共団体、民間事業者等です。
文化施設には人々を惹きつける魅力や影響力があり、持続的な経済発展や国際協力の円滑化の基盤となり、さらには国力を高めるものです。
文化芸術の創造、交流、発信の拠点として、芸術家や芸術団体などによる多様な芸術文化活動が行われています。
2003年に改正地方自治法の施行により、指定管理者制度が導入され、公共施設の民間事業者による運営が可能となりました。
そのため、現在では民間事業者が運営している文化施設も多くあり、民間のノウハウを活かしたサービスを行うなど多様化が進んでいます。
文化施設と社会教育施設の違い
文化施設は芸術文化の拠点で、社会教育施設は教育の拠点という違いがあります。
社会教育施設は、公民館や図書館、博物館などの教育施設を指し、地方公共団体や指定管理者に指定された民間事業者及び一般社団法人、一般財団法人などにより運営されています。
それぞれ社会教育法や図書館法、博物館法に基づき運営されており、地域の課題解決や住民の教養向上に資する活動を行っています。
例えば、公民館ではまちづくりや防災体制構築のために、講座や集会を実施したり、地域の団体と連携してイベントを開催したりしています。
図書館は、住民が自己教育や情報収集ができ、芸術や文学を鑑賞して地域文化の創造に関わる場所です。
博物館には地域の文化や風土、民俗に関する資料を収集し、保管・展示し、調査研究を行ってその結果を住民に還元する役割があります。
なお、公立の施設であれば地方公共団体の予算措置で運営され、一般社団法人などが設置する私立の施設は自らの費用負担で運営されています。
文化施設と生涯学習施設の違い
生涯学習施設は広い意味で学習活動が行われる施設を指し、社会教育施設や文化施設に加えて、多目的広場や会議室、民間のカルチャーセンターなどが含まれます。
生涯学習の場として市民も利用可能であり、体験的な学習や交流をはじめ、地域文化の伝承目的にも活用される施設です。
なお、生涯学習とは人々が生涯に行うあらゆる学習のことで、以下のような学習の意味で用いられます。
- ・学校教育
- ・家庭教育
- ・社会教育
- ・文化活動
- ・スポーツ活動
- ・レクリエーション活動
- ・企業内教育
- ・趣味
文化施設や社会教育施設は、生涯学習施設の一つといえます。
文化施設の役割とは
ここでは、文化施設の役割を紹介します
文化芸術の創造、交流、発信の場
文化施設には、文化芸術の創造や交流、発信の場としての役割があります。
文化芸術は想像力や感性を磨き、豊かな人間性を育み、人間が人間らしく生きるための糧となるものです。
交流を通して他者と共感し合う心を通じ、意思疎通を密なものにすることで、人間同士の相互理解の促進につながります。
文化施設は、人々がゆとりと潤いを実感でき、心豊かな生活を実現するために欠かせない場所です。
地域の文化を育て守る場
文化施設は、その地域の文化を育て守る場としての役割もあります。
地域の文化は、郷土の愛着やコミュニティ形成、地域のアイデンティティの基礎となり、国全体の文化の基盤となるものです。
文化を守るためには、幅広い住民の文化活動への支援を通じた文化の拡大、地域の文化遺産の継承、各地域の施設の充実などが求められます。
文化芸術の拠点となる文化施設は、地域の文化を守るために欠かせない場所です。
地域住民の文化芸術活動の場
文化施設は、地域住民の文化芸術活動の場としての役割も担っています。
地方公共団体によっては、文化施設が地域住民と一緒に企画・実施し、地域住民が希望するテーマで音楽や演劇などの活動を行っているところもあります。
長年にわたって培われてきた伝統文化や文化芸術活動には、その地域内外の人々を魅了する力があるのも特徴です。
このような文化は人々に元気を与え、地域社会全体を活発化させる効果があります。
文化施設は、地域の伝統文化や文化芸術活動を、多くの人に知ってもらうための大切な場所となります。
地域住民の思いをつなぐ場
文化施設は、地域住民の思いをつなぐ場としての役割もあります。
地域には、趣味の領域を超えた文化芸術に取り組む住民が多くいます。文化施設を通して、住民の活動や意思を他の住民に伝えたり、共感したりすることも可能です。
そして文化芸術に取り組む住民の存在を多くの住民が知ると、地域全体を動かす力にもつながっていきます。
また、文化施設は地域住民の活動を支える場所にもなり、愛着を持って施設が利用されることで、地域への愛着を深化させる効果も期待できるでしょう。
経済的な貢献
文化施設は、経済的な貢献を担う役割もあります。
知識経済化による産業構造の変化が進んだ昨今において、文化芸術で創造性を養うことは、産業振興にも寄与します。
新たな経済成長の要素となり、新しい市場を生み出すことにもなるでしょう。
また、創造性豊かな人材の育成は地域の経済的な競争力にもつながるため、子どものころから文化芸術に触れる機会の提供は、文化施設にとって大切な役割です。
さらに都市開発の一環として美術館や劇場などを建築し、国内外の優れた文化芸術の鑑賞機会を提供し、地域の文化的なイメージを高めて観光振興につなげる事例もあります。
このように文化施設には、文化的人材の育成や文化産業誘致などの効果も期待されます。
文化施設のトレンド
文化施設の在り方は時代とともに大きく変化しています。ここでは、文化施設のトレンドについて解説します。
地域課題・社会課題の解決手段として注目
文化施設は、地域課題や社会問題の解決手段として注目されています。
グローバル社会が進み、地方部を中心とした人口減少が止まらないなか、文化による産業や経済活性化の重要性が高まっています。
特に文化体験を求めるインバウンド観光客にとって、文化施設はその土地の歴史や文化を深く知ることができるため魅力的です。
インバウンド観光客が文化施設に多く訪れることで、地域経済の活性化につながり、事業の創出や人口減少の抑制が期待できます。
一方、集客力が期待できる文化施設であっても、環境が整っていないという課題がある施設も少なくありません。
例えば、インバウンド観光客が見込まれる文化施設でありつつも、キャッシュレス決済に対応していなかったり、多言語に対応していなかったりなどです。
地域課題や社会課題の解決手段として文化施設を活用する際には、ターゲットを明確にし、環境整備を行う必要があります。
運営の多様化
公共施設の民間事業者による運営が可能となったことで、文化施設の運営の多様化が進んでいます。ここでは、民間事業者における公共施設の運営方法を解説します。
指定管理者制度
指定管理者制度は、民間企業やNPOなどの団体が、地方公共団体に代わって公共施設の管理運営を行える制度です。
2003年に地方自治法の一部改正により指定管理者制度が導入されたことで、民間事業者が公共施設である文化施設の運営が可能となりました。
指定管理者制度は、多様化する住民のニーズに対応するため、公の施設の管理に民間の能力を活用し、住民サービスの向上やコスト削減を目的としています。
文化施設においては指定管理者制度の導入により、休館日や利用時間の柔軟な対応が可能となり、チケット販売では多様な割引制度の導入など柔軟性を持った運営が可能です。
一方、指定管理者が指定管理期間中に撤退した場合、文化施設の持続性や信用、安心感が失われるリスクがあるため、地方公共団体は民間企業の選定を慎重に行う必要があります。
PFI
PFI事業は民間資金を活用して公共事業を実施する手法で、民間事業者が地方公共団体と契約し、公共施設整備における資金調達から、設計・建設・運営・維持管理などの業務を行います。
PFI事業の主な目的は、低廉かつ良質な公共サービスの提供です。
文化施設整備におけるPFI導入のメリットは、施設の建設費や運営・維持管理費の削減が挙げられます。
また、文化施設でのPFI事業の手法において、施設の所有権を地方公共団体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定するコンセッション方式が用いられることもあります。
文化施設の運営について
文化施設の運営はさまざまなノウハウが必要となるため、運営のサポートをプロに依頼するケースが多いです。ここでは、文化施設の運営について解説します。
文化施設の運営にはさまざまなノウハウが必要
文化施設の運営は施設の維持管理・運営だけではなく、その場で体験価値を生み出し、地域の価値向上につなげることが大切です。
スペースやコンテンツをどのように活用するかも、地域の事情やターゲットに合わせて計画を練る必要があります。
また、文化施設の維持管理や運営の質向上という点においては、現場の最前線に立つスタッフの育成にも力を入れなければなりません。
地域住民や利用者の方々を意識し、サービスの質を高める研修実施やモチベーションの向上なども必要となります。
さらにインバウンド対応に力を入れる場合には、案内表示の多言語対応や看板設置が必要です。
キャッシュレス決済やチケットレスの導入、Wi-Fi設置などの検討が必要となり、これらのノウハウも必要不可欠となります。
文化施設の運営サポートをプロに依頼
文化施設の運営にはさまざまなノウハウを必要とするため、運営サポートのプロに任せるのがおすすめです。
文化施設は、リアルな感動との出会いやコミュニティの創造、社会的包摂など、さまざまな価値を創出できる施設です。
文化施設の価値を最大限に高めるためにも、施設プロデュースや施設運営管理の豊富な知見を生かし、公平性を保つことが重要になります。
JTBコミュニケーションデザインでは、施設運営のノウハウや独自の人材育成メソッド、データやデジタル技術を駆使した高品質な運営力・集客力を基礎に、文化施設のプロデュースや管理を行っています。
プロデュース実績は、PFI事業や指定管理者制度などのPPP手法で運営する公共文化施設やスポーツ施設、観光案内所など、全国70カ所以上です。
国内大手の施設運営会社として、地域と共に進化を続けています。
まとめ
この記事では、文化施設の概要や種類、トレンド、社会教育施設・生涯学習施設との違いを紹介しました。
文化施設は文化芸術の創造、交流、発信の拠点であり、地域の文化を育て守る場です。地域住民の身近な文化芸術活動の場として、国や地方公共団体、民間事業者が設置しています。
文化施設は、地域課題や社会問題の解決手段としても注目されており、地域活性化の効果も期待されます。
一方で、文化施設の運営にはさまざまなノウハウを必要とするため、文化施設の運営実績がある企業に依頼することをお勧めします。
文化施設の運営やプロデュースなら、JTBコミュニケーションデザインにお任せください。
文化施設の運営管理を通じて、リアルな感動との出会いやコミュニティの創造、社会的包摂など、さまざまな価値を創出します。
施設プロデュースや施設運営管理の豊富な知見を活かし、公平性・安全性の担保やオリジナルで多様性がある事業・サービスを推進します。
まずはお気軽にお問い合わせください。