観光まちづくりとは?目的や地域活性化の取り組みとして効果的な理由を紹介
地域活性化の方法として、地域の観光資源を活用した観光まちづくりがあります。
観光で地域を盛り上げるためには、来訪者のニーズを満たせる場所が必要であり、訪れるきっかけとなる魅力を持続的に発信し続けることが大切です。
一方で、観光まちづくりには自治体と民間企業、組織、地域住民それぞれの協力が欠かせません。観光まちづくりにおける地域の課題を把握し、計画的に進めていく必要があります。
この記事では、観光まちづくりの目的や課題、地域活性化の取り組みとして効果的な理由について詳しく紹介します。
観光まちづくりとは
観光まちづくりは、観光客の増加や地域活性化を図る施策です。ここでは、観光まちづくりの概要や観光開発との違いを解説します。
観光まちづくりの概要
観光まちづくりとは、地域が主体となって自然・文化・歴史・産業・人材などの資源を活かし、外からの人も呼び込みながら、交流を振興して活力が溢れるまちを実現するための活動です。
人口減少が進む中、地方においてはまちなかの空洞化や山間部の過疎化が深刻化しています。
一方、一部の地方では地域内外の交流をきっかけに、地域資源やライフスタイルに根ざした経済活動が生まれています。
地域の経済活動はさまざまな人を惹きつけ、人と人との交流が生まれ、地域のにぎわいにもつながっているのです。
このような場所では、自治体が民間企業や住民と協力し、まちづくり活動や人を呼び込む活動が一体となっています。
地域の魅力を感じにくくなっているまちでは、外の力も借りながら地域資源や資産を見つけ出し、内外の人に価値のある体験を提供するための土壌づくりが必要です。
土壌づくりを継続的に行うことにより、まちには多くの人が訪れ、経済活動の活発化や空き地・空き家の活用など、地域活性化につながります。
観光開発との違い
観光まちづくりは地域が主体となって行う取り組みであるのに対し、観光開発は企業誘致や外部委託などを通して、地域の経済成長を促す取り組みという違いがあります。
これまでは企業誘致や外部委託による観光開発などを通し、地域の経済成長を重視する観光開発が中心でした。
それに対し、観光まちづくりは住民主体の地域振興として、持続可能な観光による地域の資源にも焦点を充てた施策です。
観光開発と観光まちづくりの定義の違いは明確ではありません。
観光開発に対置する形で、地域の主体性が中心の取り組みが観光まちづくりという概念となっています。
観光まちづくりが地域活性化に効果的な理由
観光まちづくりの推進によって地域活性化が期待できます。ここでは、観光まちづくりが地域活性化に効果的な理由を紹介します。
地域の魅力やイメージの向上
観光まちづくりを通して、地域に眠る宝を掘り起こし、地域の新たな魅力やイメージの向上を促し、来訪者が増えることで地域活性化につながります。
日本の観光は1960年頃から始まったマスツーリズムの時代に急拡大し、当時は有名な観光地や宿泊できる場所があれば観光客を集めることが可能でした。
しかし、バブル経済崩壊後は団体旅行よりも個人旅行のニーズが高まっており、体験型の観光商品や個人の嗜好を反映する商品が求められるようになっています。
個人旅行のニーズを満たすためには、その地域の魅力を精査し、その地域を訪れる動機づけをすることが求められています。
観光まちづくりを通して地域の新たな魅力を発掘し、魅力を内外に発信することで地域のイメージ向上につなげていくことが可能です。
地域のイメージが高まると、来訪者が増えて消費の拡大につながり、地域経済の活性化を促します。
新たな産業の育成
観光まちづくりは、新たな産業を育成して地域の雇用や経済活性化を促す効果が期待できます。
観光まちづくりが活発な地域では、住民が主体となって地域の魅力を発掘するためのワークショップやまち歩きなどが盛んに行われています。
このような住民主体の活動が、新しい観光資源の育成につながる場合もあります。
例えば、住民のまち歩きを通して地域のグルメや地元の人しか知らない映えスポットなどを集めた地域の魅力マップは、観光マップにもなります。
また、まちかど博物館やオープンガーデンなどの住民の私的空間を開放することで、新しい観光資源も生まれます。
いずれも住民主体によって育成される産業であるため、観光まちづくりにおいては、地元に住む人々の意見を汲み上げることが大切です。
シビックプライドを高める
観光まちづくりが地域活性化に効果的なのは、シビックプライドの醸成につながるためです。
シビックプライドとは、地域に対する住民の愛着や誇りであり、地域社会に貢献する意識を指します。
住民が自分たちの地域に誇りを持ち、それを支えて改善しようとする姿勢で、単に郷土愛や郷土意識を示すものではありません。
観光まちづくりがシビックプライドの醸成につながるのは、その地域にしかない魅力を内外に発信することで知名度が上がり、住民が地域に対して誇りを持てるようになるためです。
住民のシビックプライドが高まると、地域住民自身もさまざまな人に地域の魅力を知ってもらおうと積極的に情報発信を行うようになります。
その結果、多くの来訪者が集まり地域活性化につながるというわけです。
観光まちづくりの課題
観光まちづくりを進めるにあたって、組織の連携やオーバーツーリズム、人手不足などの課題があります。ここでは、それぞれの課題を解説します。
組織の連携
観光まちづくりは、民間企業や住民の協力に加えて、観光協会や商工会議所などの組織と連携して進めていく必要があります。
観光まちづくりに取り組む主体となる組織は自治体の中に複数ある場合も多いため、それらをまとめることは簡単ではありません。
自治体が一体となって観光まちづくりを推進するための合意形成には、手間と労力が必要となります。
観光まちづくりを通して、目立ったり、利益が集中したりするような組織があれば、周囲からの反発も大きくなります。
このように、観光まちづくりでは利害や感情が絡んだ組織・人間関係の中で適切にコミュニケーションを取り、調整を進めなければなりません。
人手不足
人口減少が顕著な地域においては、観光まちづくりの推進にあたって人手が足りないという事態が発生します。
また、観光まちづくりにおいては観光産業における知識や技術が必要となり、実践的なスキルの習得も必要です。
地域活性化のための観光まちづくりではあるものの、スタートの時点で人手が足りていないと、施策を進めること自体が難しいでしょう。
人手不足の問題対応としては、ボランティアを活用した運営体制の構築や、地域特性に応じた対策などが必要となります。
オーバーツーリズム
観光まちづくりにおいて、観光客の増加は新たにオーバーツーリズムの問題につながる可能性があります。
オーバーツーリズムとは、観光客の増加が地域住民や自然環境、景観に負の影響をもたらし、さらには観光客の満足度を低下させる状況です。
オーバーツーリズムによって混雑や交通渋滞、ゴミのポイ捨てが増えると、交通の移動ストレスや景観を害するなどの問題が生じます。
観光まちづくりでオーバーツーリズムが問題となりやすいのは、もともと多くの地域では、必要とされるインフラの量が定住人口をベースに設計されているためです。
観光客の人数を見込んでいないため、観光客数が一定の水準を超えると、インフラのキャパシティーが限界を超えるという問題が生じます。
また、オーバーツーリズムで観光に対して厳しい目が向けられると、観光で利益を得ていない人からの不満が高まります。
そのため、観光まちづくりに取り組む際には、オーバーツーリズムの対策も合わせて考えなければなりません。
観光まちづくりの取り組みで成功するためのポイント
観光まちづくりの取り組みで成功するためには、地域の魅力を明らかにし、観光客のニーズを把握したうえで地域住民の協力が必要です。
ここでは、観光まちづくりの取り組みで成功するためのポイントを解説します。
地域の魅力を明らかにする
観光まちづくりの具体的な手法は、観光に関して人々の基本的な行動や意識の調査を行い、地域の魅力を明らかにすることから始まります。
これまで観光地として発展してこなかった地域にとって、地域の魅力を発掘するのは簡単ではありません。
まずは地域にある歴史的文化や構造物などの観光資源に目を向け、それらがない場合は、住民の生活や産業、風土など幅広い視野を持って魅力を明らかにします。
例えば、当たり前のように食べている地域に古くから伝わる料理も、郷土料理として発信すれば多くの人の興味を惹く可能性があります。
その土地の魅力や観光資源は地域によって異なるため、他の地域の成功事例を模倣しても上手くいくとは限りません。
大切なのは、観光まちづくりに使える観光資源を分析し、独自の強みを作り出すことです。
観光客のニーズを把握する
地域の観光資源が明らかになったら、観光客のニーズに合わせた観光商品の開発が必要です。
観光商品は地域ブランドを体験できる観光客との接点の一つであり、食品のような有形商品もあれば、特産ブランドのような無形商品もあります。
どれだけ優れた観光資源を有していても、観光客のニーズに適さない観光商品だと大きな需要は期待できません。
観光客のニーズを把握するためには、WebサイトやSNSの解析データを用いたデータ分析などが必要となります。
地域住民に協力を得る
観光まちづくりでは地域住民の協力が欠かせません。
新しい観光資源の発掘は簡単ではないため、地元住民が掘り出してくれないと気づかないケースがあります。
また、観光地として盛り上げるためにも住民が前向きに観光客を受け入れる体制作りが必要です。
一方で、観光業に携わらない住民にとっては観光地化にメリットを感じず、オーバーツーリズムによってむしろ損失を被るリスクもあります。
このような問題に対しても適切にコミュニケーションを取り、問題改善やフォローする体制を作り、地域住民に協力を得ることが大切です。
地域住民と地域をつなげるコミュニティを形成する
観光まちづくりで地域住民に協力を得るためにも、地域住民と地域をつなげるコミュニティ形成が大切です。
地域コミュニティとは、同じ地域に居住する人が地域をよりよくするために活動するつながりや集まりを指します。
地域コミュニティが活発になり、地域でまちづくりを盛り上げようという機運が高まると、一過性ではなく持続的な地域づくりにつながります。
また、利害の関係から観光まちづくりに関連する複数の組織をまとめることが難しいという課題もありますが、地域コミュニティの発言力が増すと組織もまとまりやすくなるでしょう。
観光まちづくりを円滑に進めていくためには、地域住民と地域をつなげるコミュニティの形成を促すことが重要です。
まとめ
この記事では、観光まちづくりの概要や目的、地域活性化の取り組みとして効果的な理由を解説しました。
観光まちづくりは、地域が主体となって地域の資源を活かし、交流を振興して活力あふれるまちを実現するための活動です。
シビックプライドを高め、新たな産業の育成にもつながります。
観光まちづくりには自治体と民間企業・組織・住民との協力が必要不可欠であり、双方の円滑なコミュニケーションが重要です。
「住んでよし」「訪れてよし」の観光まちづくりを実現するためには、観光客と地域住民の双方に配慮し、多面的かつ客観的なデータ計測と中長期的な計画に基づく総合的な観光地マネジメントを行う必要があります。
また、観光まちづくりの手法にはいろいろありますが、地域課題に応じて適切な手法を選び、複合的に推進することも重要です。
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