健康まちづくりとは?地域で取り組む際のステップや成功のポイントを解説
少子高齢化が進むなか、さまざまな地域で健康まちづくりの取り組みが行われています。
健康まちづくりは子どもから高齢者まで、すべての世代が希望や生きがいを持つために欠かせない取り組みです。
一方で、「健康まちづくりの進め方が分からない」「健康まちづくりの効果を知りたい」など疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、健康まちづくりの概要をはじめ、地域で取り組む際のステップや成功するためのポイントを紹介します。
健康まちづくりとは
健康まちづくりに関する社会的な関心が高まっています。
ここでは、健康まちづくりの概要やスポーツまちづくりとの関係、ヘルスツーリズムとの違いを解説します。
健康まちづくりとは
健康まちづくりとは、多くの市民が自立的に、また必要に応じて地域の支援を得ながら活動的に暮らせるまちをつくることです。
具体的には、出かけたくなるまちが整備され、市民が自発的にまちを歩き、生きがいにつながる活動ができるまちを作っていくことを指します。
将来推計人口によると、日本の人口は2020年の1億2,615万人から、2070年には8,700万人に減少すると予想されています。
さらに、65歳以上の人口割合も2020年の28.6%から上昇し、2070年には38.7%になると予想されるなど、少子高齢化や人口減少は歯止めがかからない状態です。
また、社会参加の場の減少による地域交流や地域活動の停滞をはじめ、大都市ではコミュニティの結びつきが薄く孤立化するリスクもあります。
自治体は、税収の低下や社会保障費の負担が増大するなどの問題も生じます。
このような課題を地域が抱えるなかでは、社会とのつながりの維持や向上、自然と健康になれる環境づくりが重要です。
そのためにも、地域が一丸となって健康まちづくりを進めていく必要があります。
スポーツまちづくりとの関係
スポーツによるまちづくりとは、スポーツを振興し、スポーツの力を積極的に活用して地域の少子高齢化や地域の活性化、健康増進を解決するまちづくりを実現することです。
「楽しさ」「喜び」「自発性」に基づき行われる本質的な「 スポーツそのものが有する価値」や、スポーツを通じた地域活性化、健康増進による健康長寿社会の実現することで、経済発展、国際理解の促進など「スポーツが社会活性化等に寄与する価値」を活用したまちづくりのことです。
例えば、充実したスポーツ施設の整備や、プロや実業団による地域スポーツの活性化、スポーツツーリズムの推進などが挙げられます。
スポーツまちづくりを通して、地域やコミュニティの活性化、地域人材の育成、スポーツ産業の広がりなど、さまざまな効果が期待できます。
また、スポーツには免疫機能の向上や精神的ストレスの緩和、体力の維持など、さまざまな健康増進効果があります。
健康まちづくりを推進する際は、スポーツまちづくりとの連携が必要です。
ヘルスツーリズムとの違い
ヘルスツーリズムと健康まちづくりの違いは、対象や目的です。
ヘルスツーリズムとは、旅行を通して健康増進や回復を図り、健康へのリスクを減らす活動を指します。
それに対して、健康まちづくりは年代や障害の有無に関係なく、心身の健康向上を目的にまち全体の環境を整備する取り組みです。
ヘルスツーリズムと健康まちづくりは概念や目的は異なるものの、深い関係があります。
例えば、ヘルスツーリズムを推進することにより、住民だけでなく健康増進に関係のある来訪者を増やすことが可能です。
まちに来る人もまちにいる人も健康になり、健康というテーマで地域の体験価値を生み出すことで、多くの人が関わりたいと思える魅力的なまちを作っていくことができます。
国が定める健康まちづくりのガイドライン
健康まちづくりはどのように推進していくのでしょうか。ここでは、国が定める健康まちづくりのガイドラインの概要を紹介します。
住民の健康意識を高める
健康まちづくりの推進にあたって、住民の健康意識を高め、運動習慣を身につけられるような取り組みが必要です。
市民運動の推奨や日常
生活の健康管理を見える化し、住民の健康意識を高めることや、地域でスポーツを実施する機会や場の創出を行います。
具体的には、活動量計などのデジタル機器を用いて身体状況を把握し、住民の健康意識を醸成していくなどの取り組みがあります。
高齢者だけでなく、働く世代が健康的な生活を送りやすい環境を整備するため、職場と連携した健康プログラムや通勤にウォーキングや自転車を取り入れる施策が推進されています。
コミュニティ活動への参加を高める
健康まちづくりでは、住民のコミュニティ活動への参加を高めることも効果的な方法です。
コミュニケーションが多い人は1日あたりの平均歩行数が多く、友人が多い高齢者は生きがいを感じる人の割合が高い傾向にあります。
具体的な取り組みとしては、交流サロンなどのコミュニティ活動への参加促進や、コミュニティ活動の拠点づくりなどが挙げられます。また、子育て世代に向けて、親子で参加できるスポーツイベントや、公園の整備などが挙げられます。
地域資源を活用した子供のあそび場づくりと交流機会の創出により、親子での健康活動を通じて、地域のつながりを強化することにもなります。
日常生活圏に都市機能を確保する
健康まちづくりの取り組みとして、日常生活圏や徒歩圏域に、生活利便施設や公園・保育・医療機関を整備して都市機能を確保することが挙げられます。
交流施設が徒歩圏域にある地区の高齢者はサークルへの参加率が高く、外出頻度が高いという特徴があります。
車の利用に不安を感じる高齢者の公共交通機関の利用を考慮し、施設までのアクセスを確保することもポイントです。
まち歩きを促す歩行空間を形成する
まち歩きを促す歩行空間を形成することも、健康まちづくりの取り組みに挙げられます。
高齢者が徒歩で外出するために必要な施設として重視されているのは、沿道の景観や休憩施設などです。
また、歩行経路を決定する際は道路横断の安全性や歩道の凹凸、段差なども重視します。
具体的な取り組みとしては、歩行ネットワークの構築をはじめ、世代を超えて利用される歩行空間づくり、歩行をサポートするモビリティの活用などがあります。
公共交通の利用を促進する
健康まちづくりのために必要なことは、公共交通の利用を促進することです。
駅から離れている人は免許を保有していない人に比べて外出率が低く、高齢者は居住地がバス停までの距離が遠くなるほど外出行動をしなくなる傾向にあります。
そのため、地域のコミュニティが主体となった交通サービスの提供や、公共交通の待合空間の整備などが必要となります。
健康まちづくりの目的とメリット
健康まちづくりには、自治体と住民の双方にメリットがあります。ここでは、健康まちづくりを推進する目的やメリットを解説します。
医療費の負担軽減
健康まちづくりを推進する目的として、医療費の負担軽減が挙げられます。
医療費の負担軽減になるのは、健康まちづくりを通して住民が歩くきっかけを作り、それが結果として病気予防につながるためです。
歩くことで気分転換やストレス軽減、体脂肪の低下や代謝向上などの効果が得られます。
経年的な調査による歩行の医療費抑制効果は、1日1歩0.045円~0.061円と試算されています。今より1,500歩多く歩くことで、医療費抑制の効果は1人あたり年間約35,000円です。
少子高齢化が進む日本において、医療費負担は今後も増加することが想定されています。
医療費は個人はもちろん、企業や国、地方自治体も負担しているため、健康リスクの高まりは保険料の増加や財政の圧迫にもつながりかねません。
住民が健康で幸せを実感できるまちの実現を目指せる
健康まちづくりの推進により、住民が健康で幸せを実感できるまちの実現を目指し、シビックプライドの醸成につながります。
シビックプライドとは、市民が地域や都市に対して持つ愛着や誇り、地域社会に貢献する意識のことです。
健康まちづくりを推進し、住民それぞれが活発に活動できる環境を構築することで、「このまちでよかった」と思うきっかけが生まれます。
また、住民にシビックプライドが浸透すると、地域活性化に向けたさまざまな取り組みに対しても寛容になるでしょう。
地域住民や旅行者の交流を含めたコミュニティの形成につながる
健康まちづくりには、地域住民や旅行者の交流を含めたコミュニティの形成につながるメリットがあります。
健康まちづくりは、出かけたくなるまちを作り、生きがいにつながる活動を促すための施策です。
住民が出かけたくなるまちの構築は、外部の人が訪れたくなるまちにもなり、ヘルスツーリズムにもつながります。
健康意識は高いものの、今まで訪れることがなかった人に対し、健康を切り口とした訴求を行うことで行ってみたいと思ってもらうきっかけになるでしょう。
また、地域住民も気軽に体験できるプログラムを提供することで、旅行者と地域内交流を活性化させ、コミュニティの形成につながっていきます。
健康まちづくりに必要なこと
健康まちづくりのためにできることとして、憩いの場の創出や体験プログラムの提供、スポーツ政策との連携などがあります。
ここでは、健康まちづくりに必要なことを解説します。
憩いの場の創出
健康まちづくりに必要なことは、住民が出かけたくなるような憩いの場を創出することです。
地域の特色を活かした多様性のある公園の整備や、緑地の保全や緑化を推進して、自然豊かな憩いの場を作ることが挙げられます。
また、小学校の空き教室や福祉施設、中心市街地の空き店舗、空き家など、地域の人が集まりやすい場所を複合施設として利用し、コミュニティの活動拠点を設けるのも有効です。
一方で、多様な主体が協働してコミュニティ活動の議論を行うためには、地域の住民や関係団体など、まちづくりの主体となる関係者がネットワーク化されることも重要となります。
住民が気軽に体験できるプログラムの提供
健康まちづくりを推進するにあたって、住民が気軽に体験できるプログラムを提供をすることも施策の一つです。
例えば、住民が健康イベントの参加などの健康づくりに関する取り組みを行った場合に、健康ポイントを付与するという方法があります。
貯めた健康ポイントを地域の協力店で利用できれば、地域活性化にもつながるでしょう。
また、ヘルスツーリズムの推進を図り、旅行者だけでなく住民も体験できるプログラムを提供することも有効です。
この場合だと、地域の自然が楽しめるウォーキングやサイクリング、温泉浴などが例として挙げられます。
スポーツ政策との連携
健康まちづくりはスポーツ政策との連携も欠かせません。
文部科学省では、スポーツ基本法の規定に基づき、スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのスポーツ基本計画を定めています。
このスポーツ基本計画の理念や方向性に基づき、自治体が行うのがスポーツ政策です。
スポーツ政策を通して住民がスポーツに親しめる環境を作ることは、健康まちづくりにもつながるため、スポーツ政策と健康まちづくりは連携して進めていくことが重要です。
また、スポーツ政策との連携においては、スポーツツーリズムのように外から人を呼び込む施策だけでなく、健康スポーツ教室や総合地域スポーツクラブなどの地域住民向けの施策も含め、総合的に進めていく必要があります。
まとめ
この記事では、健康まちづくりの概要や地域で取り組む際のステップ、成功のポイントを解説しました。
健康まちづくりは年代や障害の有無に関わらず、心身の健康向上を目的としてまち全体の環境を整備する取り組みです。
少子高齢化が加速するなか、社会保障給付費の増加は進む一方、少子化によって個々の負担はさらに大きくなることが想定されます。
保険料の負担軽減や、健康格差の拡大防止、社会保障の担い手を増やすなどの目的から健康まちづくりの推進は重要です。
また、健康まちづくりを通して生きがいにつながる活動ができる環境をつくることは、住民一人ひとりが出かけたくなる魅力的なまちの構築にもつながるでしょう。
住民が出かけたくなるまちは、外からも訪れたくなるまちでもあるため、健康まちづくりは地域活性化にも貢献します。
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