高付加価値旅行とは?ターゲットや実現するポイントを紹介
コロナの規制緩和や円安の影響でインバウンドが急回復しているなか、注目されているのが高付加価値旅行です。
高付加価値旅行を誘致することで地域経済の活性化をはじめ、国や地域のブランド向上につながるメリットがあります。
しかし、高付加価値旅行を推進しようと思っても、「そもそも高付加価値旅行とは何なのか」「何が必要なのか」など、疑問に思うことも多いのではないでしょうか、
この記事では、高付加価値旅行の基本概要やターゲット、実現するためのポイントや成功させるために必要なことなどを詳しく紹介します。
高付加価値旅行とは
観光庁では、訪日旅行1回1人あたりの総消費額が100万円以上の旅行を高付加価値旅行と定義しています。
ここでは、高付加価値旅行についてさらに詳しく解説します。
消費単価が高い旅行
高付加価値旅行は消費単価が高い旅行のことで、旅行者は一般的に富裕層が中心です。
富裕層は宿泊や飲食、ショッピングなど、さまざまなシーンにおいて価値を感じると惜しみなく高額出費を行います。
高付加価値旅行者は訪日旅行者の全体の1%であるものの、消費額は約14%を占めているため、観光地には大きな経済効果を与えます。
一方で、高付加価値旅行は都市部や有名な観光地に集中しており、地方での消費は少ないことが課題です。
富裕層マーケティングの一つ
高付加価値旅行は、多くの資産を持っていて高額な商品を購入できる富裕層を対象としたマーケティングの一つです。
富裕層は一旅行あたりの消費額が大きいだけでなく、知的好奇心や探求心が強く、旅行を通して自身の知識を深めてインスピレーションを重視する傾向にあります。
そのため、富裕層の特徴や行動に合わせた宣伝や販売活動を行うこともポイントです。
高付加価値旅行を誘致するメリット
高付加価値旅行を誘致するメリットとして、地域経済の活性化と国や地域のブランド価値の向上が挙げられます。
ここでは、それぞれのメリットを詳しく紹介します。
地域経済の活性化
高付加価値旅行を誘致するメリットは、旺盛な旅行消費を通じて、地域経済の活性化を促す効果が期待できる点です。
訪問先で使われたお金は地域の自然や文化の維持、発展に使われ、観光業が潤うことによってスタッフの賃金改善にもつながります。
また、観光客も本物の自然や文化を体験することによって、その土地や人々と深くつながることができます。
観光客は地域に貢献したい気持ちも芽生え、「滞在地を滞在する前よりも良くして離れる」という再生型観光にもつながるでしょう。
国や地域のブランド価値の向上
高付加価値旅行を誘致するメリットは、地域ファンを創出・拡大することで、国や地域のブランド価値の向上が期待できる点です。
地域ファンになった高付加価値旅行者がSNSや口コミで情報を発信することで、認知度が向上してブランド価値も高まります。
地域や観光スポットが広く認知されることによって、多くの人にとって訪れたい場所になることが期待されます。
高付加価値旅行のターゲット
高付加価値旅行のターゲットは、消費目線とマインド目線で分類されます。ここでは、それぞれの層について詳しく解説します。
消費目線のターゲット
消費目線のターゲットは、オールラグジュアリー層とセレクティブラグジュアリー層に分けられます。
オールラグジュアリー層
オールラグジュアリーは、旅行一回一人当たりの消費額が300万円以上の旅行者であり、旅行の多くで高い品質のサービスを求めます。
富裕層の中でも特にハイエンドであり、飛行機はビジネスクラス以上、ホテルは5つ星、プライベートガイドをつけるなど、高額出費が特徴です。
セレクティブラグジュアリー層
セレクティブラグジュアリー層は、旅行一回一人当たりの消費額が100~300万円の旅行者で、自分のこだわりポイントに絞って高い品質のサービスを求めます。
例えば、「ホテルの質にはこだわらないけど体験にはお金をかけたい」「飛行機にはこだわらないけどガイドにはこだわる」などです。
マインド目線のターゲット
マインド目線のターゲットは、クラシックラグジュアリー層とモダンラグジュアリー層に分けられます。
クラシックラグジュアリー
クラシックラグジュアリーは50~60代に多く、すべてにおいて高い快適性や豪華さ、品質を求める層です。
従来型のラグジュアリー志向であり、その価値観は富や力、地位、願望、消費などが中心であり、旅行においてもベストサービスを重視する傾向にあります。
モダンラグジュアリー
モダンラグジュアリーは20~30代に多く、旅行に対してはサステナビリティや本物体験などを求める層です。
新型ラグジュアリー志向ともいわれており、自らの価値観について文化や起源、独自性、スタイルなどを重視する傾向にあります。
高付加価値旅行のポイント
高付加価値旅行では、単に価格を上げるだけでは旅行者を取り込むことはできません。ここでは、高付加価値旅行を成功させるためのポイントを紹介します。
基礎要件を満たすこと
高付加価値旅行者が旅行に対して求めることには、以下の基礎要件が挙げられます。
- ・本物の体験ができるか
- ・独占的であるか
- ・パーソナライズできるか
- ・プロフェッショナルのサービスが受けられるか
- ・評価が高く注目度が高いか
- ・値段に合った価値が受けられるか
高付加価値旅行者は、異文化に触れたり美味しいものを食べたり、美しい自然に触れてリラックスすることに加え、旅行する意味を求める傾向にあります。
自身や同行者が成長できるか
高付加価値旅行者が旅行に対して求めることに、旅で得た発見や経験を自身や同行者の日常生活に取り込み成長することが挙げられます。
外国人旅行者の中には自国で置かれている環境や状況に満足できず、異なる価値観の中で何かのきっかけを探したいという期待感を持って訪れる人もいます。
このような状況の中で観光や体験を通して、新しい発見や気付きを与えるきっかけがあると「ここに来てよかった」という満足度につながるでしょう。
サステナブルな旅行であること
高付加価値旅行者のトレンドにサステナブルがあり、旅を通じて地域の文化や経済、環境にポジティブな影響を与えたいと考える旅行者が増えています。
そもそもサステナブルな旅行とは、訪問客や産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境や社会文化・経済に配慮した観光です。
高付加価値旅行を誘致するためには、伝統や文化、自然など、サステナブルな要素を取り入れることもポイントになります。
高付加価値旅行の誘致に向けた4つの課題
観光庁の『地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりに向けたアクションプラン』では、4つの課題が指摘されています。
高付加価値旅行を成功させるためにも、どのような課題があるのか把握しておきましょう。
ウリの課題
ウリの課題とは、高付加価値旅行者に訴求力のある魅力的なコンテンツの発掘力や商品造成力が不足していることです。
例えば、旅行者の理解が欠如している中で価値観の押し売りになってしまっていたり、当該地域の自然や文化に根差していなかったりなどのケースもあります。
また、どのような層をターゲットにして価値体験を提供するかが明確化されておらず、地域経営の課題や役割分担が共有・整理されていない場合もあります。
高付加価値旅行社が満足するようなコンテンツの磨き上げを図りつつ、情報発信の強化が重要です。
ヤドの課題
ヤドの課題とは、高付加価値旅行者が満足するような上質なインバウンド宿泊施設が地方に不足していることです。
宿泊施設が不足する理由として、ターゲットやコンセプトが明確になっていないことや、資金面・制度面での問題もあります。
また、宿泊施設の整備には地方自治体や地域の金融機関、企業、観光産業などの関係者が中心的な役割を果たします。
しかし、それぞれの立場ごとに事情もあり、足並みが揃いにくいこともインバウンド宿泊施設の整備が進まない要因です。
そのため、地域の関係者や役割分担と認識を共有し、事業性を適切に評価したうえで、資金の供給や融資のリスク軽減などの課題解決を図る必要があります。
ヒトの課題
ヒトの課題とは、高付加価値旅行者のニーズを満たすガイドやホスピタリティなどの人材が不足していることです。
ガイドや通訳はいても、地域や観光資源に特化している地域ガイドやスペシャリストガイドなど、旅行者の満足度を高める優れたガイドは足りていません。
人材不足が起こる理由として、高付加価値な観光地づくりや送客に必要な知識を高める機会がないことや、人材と地域との連携不足が挙げられます。
高付加価値旅行者を地方に送客するための人材育成や、外国人材も含めた他業種人材の活用に取り組む必要があります。
コネの課題
コネの課題とは、海外における有力な高付加価値旅行者誘客人脈へのコネクションが不足していることです。
このような課題が起こる原因として、高付加価値旅行を取り扱う海外旅行会社等へのセールス不足や情報提供できる体制、人材不足が挙げられます。
また、高付加価値旅行者を地方に送客する人材やサプライヤーなどの国内関係者が点在し、連携が不足していることも要因です。
高付加価値旅行者の誘客を促すためにも、関係機関や事業者とのネットワーク強化を図ることが重要になります。
高付加価値旅行を成功させるために必要なこと
高付加価値旅行を成功させるためには、課題の把握と対応、ネットワーク構築や効果的な情報発信などが必要になります。
ここでは、それぞれのポイントを紹介します。
国内の関係者のネットワークを強化する
高付加価値旅行を成功させるためには、ウリ・ヤド・ヒト・コネの課題解決のために、国内の関係者のネットワークを強化させる必要があります。
そのためには、日本側で旅行を手配する旅行会社と地域、コンテンツを有している事業者がつながることが大切です。
また、関係者が実際に会って話ができる場に参加することや、ソーシャルメディア等を通じて情報交換を行うことも有効といえます。
富裕層向けのコンテンツを充実させる
富裕層向けのコンテンツを充実させて、旅行の価値を高めることも高付加価値旅行を成功させるために必要です。
コンテンツ自体に価値がなければ魅力を感じてもらうことはできず、高付加価値旅行にはつながりません。
例えば、「日本でしか体験することができない」「この地域でしか食べることができない」など、他の地域にはない魅力があることが重要です。
コンテンツ造成においてはガイドの存在も重要で、富裕層はその道のプロや人間国宝と呼ばれているような人に指導してもらいたいと考える傾向にあります。
また、高付加価値旅行はその価値にあった金額を支払うことに抵抗はないため、そのコンテンツに適した価格設定を行うことが大切です。
情報発信やセールスを強化する
高付加価値旅行を成功させるためには、富裕層向けのセールスを強化させて、情報発信を行う必要があります。
具体的には、海外広告媒体やメディアの活用、Webサイトや映像制作、インフルエンサーマーケティング策定や実施などです。
また、動画やデジタルパンフレットを作成し、高付加価値旅行の魅力を多言語で発信する方法もあります。
まとめ
この記事では、高付加価値旅行の概要やターゲット、実現するポイントを紹介しました。
総消費額が100万円以上の訪日旅行のことを高付加価値旅行といい、ターゲットになるのは主に富裕層です。
消費単価が高い高付加価値旅行を誘致することで、地域活性化につながり、地域や国のブランド価値の向上につながるメリットがあります。
一方で、高付加価値旅行の誘致にはウリ・ヤド・ヒト・コネの課題もあり、ネットワークの強化や環境整備、魅力あるコンテンツの造成も欠かせません。
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