訪日インバウンドマーケティングとは?目的や戦略、手法を紹介
インバウンド需要が増加するなか、訪日インバウンドマーケティングの重要性が高まっています。
訪日インバウンドマーケティングは、企業や行政、地域の特性や観光資源の種類によって効果的な戦略が異なります。
この記事では、訪日インバウンドマーケティングの概要や目的、戦略、手法を紹介します。
訪日インバウンドマーケティングとは
訪日インバウンドマーケティングとは、日本に訪れる外国人観光客をターゲットに行うマーケティング施策のことです。
観光産業や商業施設、行政などが、訪日外国人に対して効果的なプロモーションや環境整備をし、来訪や購買を促進するために行います。
具体的には、旅マエ・旅ナカ・旅アトまで、旅行客の行動に基づいたプロモーション活動や広告配信などです。
これにより、観光地や周辺施設の集客力を高め、外国人観光客の消費行動を促す効果が期待できます。
訪日インバウンドマーケティングでは、外国人目線でニーズを知ることや潜在層の発掘をはじめ、来日して不便を感じないようにすることも大切です。
また、同じ外国人でも東アジアから訪れる人は訪日経験が多く、欧州から訪れる人は訪日経験が少ないなどの違いもあります。
このような違いから、地方には新たな刺激を求めて訪日経験が多い外国人が訪れたり、都会には訪日経験が多い外国人・少ない外国人が混在したりなどの地域差も生じます。
そのため、それぞれの市場を把握し、ターゲットとなる外国人に合わせたマーケティングが必要です。
訪日インバウンドマーケティングの市場と特徴
JNTO(日本政府観光局)では、市場ごとの訪日マーケティング戦略を立てています。ここでは、訪日インバウンドマーケティングの対象となる市場と特徴を紹介します。
東アジア
韓国や台湾、香港などの東アジアは、訪日経験者が多く成熟度の高い市場です。
マーケティング戦略としては、航空会社との連携強化によるリピーターの消費額単価向上や、地方誘客の促進などが掲げられています。
一方、中国に関しては、未訪日者と訪日経験者が混在している市場です。
内陸都市部居住者やZ世代を中心とする未訪日者には、オーバーツーリズムに配慮しつつ、映画やアニメなど日本の文化を取り入れたコンテンツを含めた情報発信で地方誘客を図ります。
東南アジア
タイ、フィリピン、ベトナム、インド、インドネシアなどの東南アジアは、未訪日者が多く成熟度が低〜中程度の市場です。
訴求力の高いコンテンツ発信により、リピーターと未訪日者の両方を視野に入れた幅広い誘客の展開や地方誘客の促進がポイントになります。
未訪日者には従来から人気のコンテンツを中心として、流行を踏まえた情報発信を行い、旅行先として日本を選択させるプロモーションを展開する必要があります。
また、シンガポールにおいては訪日経験者が多く、成熟度の高い市場であるため、認知されていない地方の魅力や学びの要素を含む旅行などの新しいコンテンツの訴求が効果的です。
米国
米国は海外旅行の市場規模に対する訪日旅行者数の割合が少なく、成熟度は中程度で伸びしろが期待される市場です。
そのため、米国市場においては未訪日者に対して訴求を行い、新たな訪日旅行者の獲得を図る必要があります。
また、米国市場はアドベンチャートラベルやクルーズ旅行における成熟度の高さも特徴です。
このような特性を踏まえ、リピーターに対しては、地方への観光ルートの開拓、地方誘客の促進などが効果的となります。
欧州
イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリアなどの欧州は、未訪日者が多く成熟度がやや低い市場です。
未訪日者が多いため、日本独自の強みとなる伝統文化のコンテンツや食事、お酒などの多様なコンテンツを発信し、新規訪日層の開拓を行う必要があります。
サステナブルに対する関心が高い市場であるため、サステナブルツーリズムを踏まえたプロモーションも効果的です。
新たな市場
訪日インバウンドマーケティングの市場として、中東地域やメキシコ、北欧地域などの新しい市場が注目されています。
多くは未訪日者であり、旅行者としての日本の認知度も低いため、新規訪日層の獲得を図ることが重要です。
まずは日本を代表する観光都市を巡るゴールデンルートを中心に、自然、食、文化、歴史などについて情報発信を行うのがポイントになります。
観光立国推進基本計画を踏まえた訪日マーケティングの重要性
訪日インバウンドマーケティングでは、観光立国推進基本計画を踏まえた訪日マーケティングが重要です。
観光立国推進基本計画とは、日本政府が策定した観光立国の実現に向けた具体的な目標や施策などを定めた計画を指します。
これを踏まえてJNTO(日本政府観光局)では、持続可能な観光・消費拡大・地方誘客の実現に向け、きめ細やかにプロモーションを展開するための戦略を策定しています。
日本には、自然を楽しむアクティビティ、生物多様性、伝統工芸・伝統芸能、温泉、食文化など、さまざまな価値があります。
目指すべき方向性は、これらの提供価値を活かし、地域の環境・文化・経済の持続可能性を高める観光の実現です。
訪日インバウンドマーケティングの実施においても、この考え方をもとに推進していく必要があります。
また、世界的なサステナブルな意識の高まりから、プロモーションにおいては環境配慮の促進も大切です。
企業が取り組むべき訪日インバウンドマーケティング
訪日外国人の集客を成功するにあたって重要となるのは、ターゲティングとそれにあった効果的なプロモーションの実施です。
ここでは、企業が取り組むべき訪日インバウンドマーケティングを紹介します。
SNSの活用
SNSは国内外を問わず多くの人が利用しており、訪日外国人観光客にも情報収集ツールとして活用されています。
そのため、SNSを活用して観光地の写真や食文化、特産品、イベント情報を発信することは、訪日インバウンドマーケティングとして有効です。
また、ユーザーからのコメントや質問に対応し、双方のコミュニケーションを図ることにより、地域の魅力やスポットに対する興味を高めることにもつながります。
外国人観光客向けポータルサイトへの掲載
訪日インバウンドマーケティングとして、外国人観光客向けのポータルサイトに情報提供するのも方法の一つです。
例えば、ホテルなどの旅行に関する口コミ・価格比較などを行っているサイトや、旅行ガイドサイト、日本観光に特化したサイトなどが挙げられます。
また、JTB BÓKUNのような観光事業者や行政、観光協会などが利用できるOTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)もおすすめです。
OTAはオンラインだけで旅行に関する手配を完結できるサービスで、集客力があるため、効率よく集客を図ることができます。
GoogleマップのMEO対策
Googleマップ上で店舗情報を上位に表示させるためのMEO対策も、訪日インバウンドマーケティングに効果的です。
外国人観光客は、お店の料金や営業時間、場所、特徴などの情報を調べるために、Googleマップを利用する場合が多くあります。
そのため、外国人観光客が知りたい情報を正確かつ充実させることが重要です。
また、Googleマップのレビューや評価など、ほかの外国人観光客の体験談や感想なども、来店しようと考えている訪日客にとっては有用となります。
Webサイトの多言語対応
訪日インバウンドマーケティングの方法として、複数の言語でコンテンツの閲覧が可能となるWebサイトの多言語対応もあります。
日本語サイトのように単一言語で構築されたWebサイトに、言語切り替え機能を実装し、ユーザーが選択した言語でコンテンツの表示ができるサイトです。
Webサイトを多言語対応することにより、特定の国や地域に向けた情報発信が可能となり、海外市場へのアプローチを効果的に行えるようになります。
現地の言語で最適化されたコンテンツが提供されていると、SEO対策においても効果的です。
キャッシュレス決済の導入
外国人観光客が気軽に買い物できるように、キャッシュレス決済の導入を促すことも訪日インバウンドマーケティングの一つです。
海外ではキャッシュレス決済が進んでいることもあり、「慣れない通貨での支払いは面倒」「為替手数料がもったいない」と感じる外国人観光客も多くいます。
なかには、キャッシュレス決済が当たり前と思い日本に訪れている方もいるでしょう。
キャッシュレス決済の非対応は消費機会の損失や、「キャッシュレスが使えない」と口コミに書かれてしまうなどのリスクがあります。
そのため、QRコード決済やクレジットカードなど、キャッシュレス決済の導入を進めていく必要があります。
行政が取り組む訪日インバウンドマーケティング
インバウンド観光の拡大においては、行政による環境整備も重要です。ここでは、行政が取り組む訪日インバウンドマーケティングを紹介します。
無料Wi-Fiの設置
行政の訪日インバウンドマーケティングにおいては、外国人観光客が気軽にスマホやタブレットを使えるようにするための無料Wi-Fiの設置が挙げられます。
海外ではお店をはじめ、公共機関や交通機関でも無料Wi-Fiが使用可能です。
一方、日本は諸外国に比べるとWi-Fiの利用エリアが限られており、必要なときに地図がみれなかったり、支払いができなかったりなどストレスの原因にもなります。
インターネットを自由に使える環境は外国人観光客の満足度を高めることにつながり、リピーターや好意的な情報拡散にもなります。
多言語対応ツールの導入
行政の訪日インバウンドマーケティングとして、多言語対応ツールの導入があります。
外国語スキルを保有する人材確保が難しい一方で、インバウンド需要の高まりから、多言語需要の増加や非対面での案内ニーズが高まっています。
このようなニーズに応えるためにも、多言語対応ツールの導入が欠かせません。
事例としては、観光案内所では対話型AIサービスを導入し、観光案内サービスを提供するといった取り組みがあります。
医療機関の情報発信
外国人観光客に対する医療機関の情報発信は、旅行中のケガや病気に対する不安を軽減し、安心して旅行を楽しむためにも重要です。
訪日外国人が利用しやすい医療機関について、WebサイトやSNSで多言語で情報発信したり、外国語対応が可能な医療スタッフの配置を進めたりなどが挙げられます。
これらの情報発信は、健康問題や緊急事態に対応するためのガイドとなり、外国人観光客に安全な旅行を楽しんでもらうために必要です。
まとめ
この記事では、訪日インバウンドマーケティングの概要や目的、戦略、手法などを解説しました。
訪日インバウンドマーケティングは外国人観光客をターゲットに、観光地や商業施設などの集客、売り上げの最大化を目的に行う施策です。
地域にとっても高い経済効果が見込め、地域の活性化を促す効果も期待できます。
一方で、訪日インバウンドマーケティングを成功させるためには経験やノウハウが必要です。まちの魅力を発掘し、いかに効果的に効率よく訴求できるかどうかがポイントになります。
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