観光におけるEBPMとは?推進のメリットや使用するデータの種類、課題を紹介
証拠に基づいて政策立案を行うEBPMは、観光分野においても効果測定や立案を行う際に高い効果が期待されています。
さまざまな分野で注目されているEBPMですが、「EBPMを観光に活かす方法が分からない」と疑問に感じる方も多いでしょう。
EBPMはメリットだけでなく課題もあるため、正しく理解して推進していく必要があります。
この記事では、観光におけるEBPMの概要や推進するメリット、使用するデータの種類、課題や押さえておくべきポイントなどを紹介します。
観光におけるEBPM
観光におけるEBPMとは、確かなエビデンスに基づいて観光政策の立案や実行、効果検証を行うことです。ここでは、EBPMと観光におけるEBPMの必要性を紹介します。
EBPMとは
EBPMとは、データや事業の効果を表すエビデンスに基づく政策立案のことです。
EBPMは、Evidence Based Policy Makingの略称で、もともとは医療の世界で生まれた考え方となります。
経験や勘、論理的思考だけですべてを決めるのではなく、データを適切に分析して結果に基づいて意思決定をすることが、正しい判断につながるというものです。
日本国内だけの取り組みではなく、世界的に推進されていますが、欧米諸国に比べるとEBPMの取り組みは比較的遅れている現状があります。
このような背景もあり、内閣府を中心にEBPMを推進する動きが加速しており、さまざまな分野で注目を集めています。
また、EBPMが推奨されるようになったのは、ICTの発達やAI技術の成長からなるビッグデータが活用できるようになったことも理由といえるでしょう。
これらは、実社会におけるリアルな動きや人々の関心の把握につながります。
政策立案のためのエビデンスを多く集められる今の時代だからこそ、EBPMを活用しやすくなっているというわけです。
観光におけるEBPMの必要性
観光分野におけるEBPMは、社会情勢や地域経済などの課題や問題点を洗い出し、それに合った政策を立案するために重要です。
観光産業は総合産業とも言われるように、宿泊施設や飲食店、土産物屋をはじめとするさまざまな産業が含まれています。
これまでは、観光スポットのシーズンピークや大規模イベントの来訪者の数、消費額の分析などは行うものの、それらに付随する施設データの分析は難しいと考えられてきました。
例えば、地域の観光施設で去年より多くの人が訪れた場合に、「去年より多くの人が訪れた理由」を答えとして明確に出せないという状況です。
このような場合、EBPMを活用することで細かく分析したエビデンスから現状の課題を洗い出し、政策立案に活かすことができます。
また、効果測定を行うことで、政策に対してどのような効果があったかも分かるようになります。
観光にEBPMを推進するメリット
観光にEBPMを推進することで、さまざまな効果が期待できます。ここでは、EBPMを推進するメリットを紹介します。
データドリブンな施策ができる
観光にEBPMを推進することで、データドリブンな施策が可能となり、経験や勘に根拠を与えることやボトルネックを特定できるメリットがあります。
データドリブンとは、データに基づいて意思決定やアクションを行う考え方やプロセスのことです。
経験や勘がデータの観点から裏付けられると、担当者が変更してもデータを基に同様の方法で意思決定できます。
また、データを収集して分析できれば、思わぬところに潜んでいるボトルネックを早期に発見できる可能性もあります。
中長期的な成果を生み出しやすい
観光にEBPMを推進するメリットは、根拠に基づくデータの活用により、中長期的な計画を立てられることです。
データに基づいた問題認識や目標設定を行うことで、一過性ではなく、長期的に成果を生み出しやすくなります。
そのためには、政策手段の内容や対象を限定して始めるスモールスタートが重要です。
スモールスタートで施行された手段の効果検証や課題分析の結果に基づき、政策手段の見直しや改善を図りましょう。
予算の有効活用につながる
予算の有効活用につながることも、観光にEBPMを推進するメリットです。全方向を対象とした政策ではロスが多く生じ、コストの増大につながります。
その点、EBPMを実践すると、成果の出やすいポイントに絞って人的・資金的リソースを投じられるため、高い費用対効果が期待できるでしょう。
効果を検証しやすい
観光にEBPMを推進するメリットは、エビデンスから現状課題や政策課題を特定し、それに対する人員や活動規模が決められるため効果検証がしやすいことです。
正確性の高い効果検証を行うことで、次回以降の政策立案につなげることや、関連産業・来訪者の信頼を高めることにつながります。
観光におけるEBPMで使用するデータ
観光におけるEBPMでは、さまざまなデータを活用できます。ここでは、観光におけるEBPMで使用するデータをいくつか解説します。
エリア全体の観光客数
エリア全体の観光客数を把握し、日帰りや宿泊の人数などを分析することで、エリア内の回遊性を高める政策立案につながります。
例えば、日帰りの観光客が多い場合、周辺の観光スポットも含めた宿泊プランを立案し、宿泊滞在の拡大を図るという立案ができます。
地域全体の観光客数を正確に知ることは、新たな観光施策の立案において必要不可欠です。このような人流データ収集は、主にスマートフォンの位置情報を用いて行っています。
近隣周遊状況
人流データの活用により、近隣周遊状況が把握できるため観光プランの立案に活かすことができます。
例えば、近隣周遊のデータ分析により、観光プランに含まれていない隣のA市への来訪が多いことがわかったとします。
この場合、新たな観光プランの立案にA市を含めることによって、新たな需要が期待できるというものです。
また、A市の中でどこに多く来訪しているかも調べることで、観光客がA市の何に興味を持っているのかを把握できます。
来訪者分析
来訪者分析を行うことで、どの観光スポットにどんな観光客が来訪しているか把握できるため、それに基づいた観光プランの立案ができます。
例えば、データからある観光地に子連れのファミリーが多く訪れているとわかった場合、その地域の宿泊施設において、子連れ向けの宿泊プランを設けると宿泊を促すことができます。
また、外国人が多く来訪している場合は多言語対応や無料Wi-Fiの設置などの整備も効果的です。
交通状況
観光におけるEBPMにおいては、観光地周辺の交通状況のデータも参考になります。
例えば、観光シーズンに車の渋滞が発生している観光地では、時間通りに目的地に到着できず、ストレスを抱えている観光客が多いと判断できます。
こうした経験が次回以降の観光を控える原因になる可能性もあるため、このような場合は、シャトルバスの導入や混雑回避ルート案内の拡充などの対策が必要です。
Webサイトのデータ
プロモーション施策において、Webサイトのデータ活用は重要となります。
例えば、サイト訪問が少なく実来訪が多い地域では、狙ったキーワードで検索上位に表示させるためのSEO対策が効果的な施策です。
一方、サイト訪問が多く実来訪が少ない地域では、Webサイトのコンテンツ強化やアクセスガイドの充実などの対策が必要となります。
Webサイトが持つデータも、観光におけるEBPMで活用できます。
観光におけるEBPMの課題
観光におけるEBPMの課題としては、ノウハウ不足や日常業務の忙しさ、エビデンス不足が挙げられます。ここでは、それぞれの課題について解説します。
ノウハウ不足
観光におけるEBPMの課題として、EBPMに関する知識やノウハウの不足が挙げられます。
EBPMの活用には、統計学や計量経済学などの定量的手法に関する専門知識が欠かせないため、担当者を設置して知識やノウハウを習得する機会を与える必要があります。
専門人材の登用は簡単ではないため、統計人材育成や登用は長期的な課題として捉えておく必要があるでしょう。
日常業務の忙しさ
EBPMを実施するにあたって、政策現場は日常業務が忙しく、データ分析やその結果を政策に活かすだけの余裕がないことも課題として挙げられます。
担当者がEBPMに関する知識やノウハウを習得するにあたって、そもそも十分な時間を確保できないというケースもあるでしょう。
ロジックの整理やデータ分析、効果検証などの作業も含めると、現場には大きな負担がかかります。
エビデンス不足
EBPMに費やせる時間が確保できても、データや調査研究などのエビデンス不足によって、政策形成につながらないケースもあります。
特に行政においては、個人情報のデジタル化はうまく進んでいない現状にあります。
EBPMを推進するためには、Webサイトなどのデジタルデータの活用や民間企業が持つデータの活用もポイントです。
観光におけるEBPMで押さえておきたいポイント
観光におけるEBPMの推進におすすめの支援サービスとして、「AITでまちあげ」があります。ここでは、観光におけるEBPMで押さえておきたいポイントを紹介します。
EBPM時代におけるデジタル観光プロモーションの課題
EBPMは、さまざまなデジタルデータの取得ができるWebサイトの活用がおすすめです。一方、デジタル観光プロモーションの課題としては、以下のようなことが挙げられます。
- どれくらいの実来訪がどのエリアからやってきたかわからない
- 実来訪につながる広告や施策がわかりにくい
- 実来訪者のペルソナやニーズが把握しにくい
このような課題を解決するための支援サービスが「AITでまちあげ」です。
AITでまちあげは、マイクロアド社の地方自治体特化型マーケティングプロダクト「まちあげ」と、JTBコミュニケーションデザインのツーリズム業界向けWebアクセス解析サービス「AIアナリストforツーリズム」により、観光地への実来訪者の観点からプロモーションの分析ができるサービスとなります。
AITでまちあげの活用
AITでまちあげを活用することにより、自治体の観光プロモーションに対し、適切な広告配信や実来訪計測まで一気通貫でサポートを受けられます。
Webサイト訪問と実来訪を掛け合わせることで、該当する観光地のコンディションを判断します。その傾向から、来訪者を増やすための施策を提示し、観光地への誘致施策のエビデンスとしての活用が可能です。
分析結果を基に改善サイクルを回すことにより、観光地への誘致や実来訪を促進できるメリットがあります。
AITでまちあげは、広告配信、Web分析、実来訪計測のセットで提供しています。
Webサイトの解析や対象地域への実来訪計測のサポートが受けられるため、知識やノウハウ不足への問題にも対応でき、担当者の負担も軽減できるでしょう。
まとめ
この記事では、観光におけるEBPMの概要や推進のメリット、使用するデータの種類、課題を紹介しました。
観光におけるEBPMとは、エビデンスに基づいて観光政策の立案や実行、効果検証を行うことです。政策の有効性を高め、予算の有効活用にもつながります。
一方、観光におけるEBPMの課題としてノウハウ不足や日常業務の忙しさ、エビデンス不足も挙げられます。
このような課題を解決し、観光におけるEBPMを推進するためには、「AITでまちあげ」の活用がおすすめです。
AITでまちあげはマイクロアド社のまちあげサービスと、JTBコミュニケーションデザインのまちあげサービスによる観光プロモーション支援サービスです。
観光地への実来訪者の観点から、プロモーションを分析し、自治体観光プロモーションやWebマーケティングの促進を図ります。
また、実来訪を増やすための対策を提示し、観光地への誘致施策のひとつのエビデンスとしてEBPMに活用できます。
まずはお気軽にお問い合わせください。